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Author:メケオ
38歳。家族は妻が一人。ロック、ブラックミュージック、無頼派文学などを好む。尊敬する人物は太宰治と岡本太郎とポールウェラー

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キッチン 吉本ばなな
 大変失礼な話なのですが、私は昔から、なぜか「サラダ記念日」と「キッチン」を混同していて、「キッチン」と聞くたびに、例の「あなたがおいしいと言ったから・・・」のイメージが浮かんでいたので、「俺には関係ナイネ」と、この名作を手に取ることがなかった。

 そして時が流れ「キッチン」が吉本ばななさんの書いた小説であることを知り、早速購入し、一挙に読み上げ、それはそれは深く感動し、なぜもっと早く手にとらなかったのか、と後悔したのでした。

 前述の通り、「キッチン」について何も知らなかった私が解説するのもなんですが、「キッチン」は国内では200万部を売り上げ、海外25カ国でも翻訳された大ベストセラーです。

 この「キッチン」はおおまかに言うと、祖母と二人で暮らしていたみかげが、祖母を亡くし、祖母の顔見知りの大学生雄一とその父と言っても女装しているので母として扱われるえり子さんとともに、奇妙な共同生活をはじめ、そこで起こる出来事や、みかげの心境の変化などが描かれている話です。

 主要登場人物は三人ともに個性的で、三人の距離感も独特で微笑ましいものです。主人公であるみかげはマイペースで、どんな状況下にあっても自分の価値観を大事にする女性であるのですが、価値観を大事にする方向に努力していると言うよりは、自然とそう言うことを身につけてると言う印象が強いです。
 続編の「キッチン2」ではもっと浮き彫りになりますが、極端な言い方をすれば、「死を意識して、しっかり生きている女性」とでも言うのでしょうか。

 この小説の中で、私の好きな場面は、雄一と一緒に引っ越しハガキを作る場面です。この二人の独特な会話の間合いがなんとも言えません。
 それからもう一つ、二人がなぜか同じ夢を見た後に、みかげがラーメンを作り、雄一がジュースを作る場面。みかげはこの瞬間を切り取り、感動し胸にしまい込むのですが、心の中には「くりかえしくりかえしやってくる夜や朝の中では、いつかまたこのひとときも、夢になってゆくかもしれないのだから」との思いがあるのです。

 文章が幼いなどと、批判の向きもあるようですが、幼いかどうかはともかくとして、とても説得力のある素晴らしい文章だし、自由に筆を運んでいる感じに好印象を覚えました。
 そして何よりも、一行の持つ「瞬発力」がすごい。この「瞬発力」を持った言葉や文章で、読む人の心に風穴を開けるはずです。
 回りくどい注釈や描写よりも、必要な言葉が必要な場所にある事が大事なのだな、と思わず感心してしまいました。

 そんな名作「キッチン」は角川文庫の文庫版「キッチン」に収められています。機会があれば、ぜひご一読ください。
 
 
キッチン キッチン
吉本 ばなな (1998/06)
角川書店

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